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スポーツ選手の未来と心身の健康を守るために

新着情報 2023.07.21

スポーツ選手の未来と心身の健康を守るために

テクノサイエンス株式会社は、健康食品やサプリメントの開発・製造・販売を行う会社です。ペプチド合成の研究に携わり、数々の医薬品開発を手掛けた経験を活かし、質の高い健康食品の開発に取り組んでいます。

2019年に発生した競泳選手のドーピング違反で、テクノサイエンス社製品に禁止物質が混入していたと認定されました。同社は、自社製品への薬物混入は事実に反するとして、2023年3月に日本アンチ・ドーピング機構(JADA)などを提訴しました。民事裁判では異例となるドーピング問題の訴訟に踏み切った理由を、代表の樫本社長に伺います。

医薬品開発のノウハウをサプリメントに活かす

テクノサイエンス株式会社は、医薬品の開発実績を活かし、「健康寿命を伸ばす」をテーマに安全で高品質な製品開発を行っています。透析患者のために開発された水なしで飲めるゼリー状に有効成分が濃縮されたサプリメントや、アスリートの身体作りに欠かせないペプチド(アミノ酸)のサプリメントなどを開発し、多くのユーザーから支持を得ています。

「ただサプリを飲めば良いというわけではなく、有効成分を必要な量だけ摂取しないと効果は感じられない。必要な量を濃縮してサプリメントにするという技術では特許も取得している」そう話すのは、代表の樫本氏です。

「サプリメントを上手く活用して健康寿命を伸ばしてもらいたいと考えている。たとえば、アスリートは食事だけで十分に栄養成分を摂取するのは難しく、食べ過ぎたり、体質に合わなかったりして、体調に異変が起きてしまうこともある。必要な栄養成分はサプリメントで補って、健康を維持しながら競技を続けてもらいたい」

 

2019年に発生したドーピング違反問題

同社がドーピング問題に巻き込まれたのは、東京オリンピック前年の2019年。ある競泳選手のドーピング違反の原因が、同社のサプリメントに禁止薬物が混入だと認定される事案が公表されました。禁止薬物は「オスタリン」という成分で、日本国内では流通していません。テクノサイエンスは「自社製品に禁止成分が混入した事実はない」と主張しますが、競泳選手側の意見が認められ、4カ月の資格停止処分を受けました。

樫本氏は「関係機関で行われた検査方法に疑問があるし、そもそもサプリメントに薬物が混入することはありえない。今まで弊社のサプリメントを愛用してくれていたお客様が離れていってしまったし、スポーツチームとの契約も打ち切りになった。社会からの評価や信頼が低下した損害は大きい。」と当時を振り返ります。

 

2023年3月JADAなどを提訴ー訴訟損害賠償請求に踏み切る

2019年の事案から4年の月日を経て、2023年3月にテクノサイエンス社は原因の認定や周知に関わった日本アンチ・ドーピング機構(JADA)・日本スポーツ仲裁機構・日本水泳連盟の機関に損害賠償を求める訴訟を起こしました。当時行われた検査には、以下2点の問題があると考えられます。

1、該当選手は同社のサプリメント以外にも約10種類の製品を服用していたが、テクノサイエンス社の製品のみがJADAの依頼でサンプルとして測定された

*弊社商品以外は米国(ソルトレイク)の分析期間で検査。オスタリンは検出されず。(検出限界2ng/mL)
*弊社商品のみWADA認定分析期間にてJADAより依頼して検査。選手の計算値より0.9ng/mLのオスタリン検出。0.9ng/mLはソルトレイクの分析期間の検出限界以下である。

2、JADAの公式な発表では個人情報保護のため尿中の検出量が発表されなかった

訴訟に踏み切った理由について、樫本氏は次のように話します。「検査の方法や基準が不明瞭で、明らかに正当性を欠いている。ドーピングをめぐる問題の裏側には、わたしたちのような小さな製薬会社が、大企業・マスコミ・関係組織・スポンサーなどの利権争いに撒きこまれている構図があると感じる。同じことを繰り返さないためにも、泣き寝入りはできない」

 

過度な規制が選手や関係者を苦しめる―ドーピング問題の現状に警鐘

樫本氏は現在の日本のドーピングに関する制度には過度な規制があると感じています。その一つが、サプリメントに関するJADAの「認証制度」です。JADAは、アスリートが引用するサプリメントに認証制度を設け、自団体が認証したサプリメント以外の服用を避けるように進言しています。

ドーピングの定義は「治療効果がある医薬品を使用して不正に競争力をあげること」です。本来は医薬品の範疇で行われるべき規制(厚生労働省の取り締まり)を、認証制度によりサプリメントや食事にまで広げようとするJADAの方針を、樫本氏は問題視しています。

薬の有効量(体内で効果を発揮するために必要な量)を考慮せず、わずかでも検出されればドーピングの原因と判断する姿勢は、ドーピングの助長につながります。また、スポーツ基本法の第29条には「JADAがアンチドーピングをコントロールする」と明記されており、JADAの姿勢はこれに反しているといえます。

「ドーピング問題が食事や健康食品・サプリメントにまで広がってしまったことが原因で、アスリートや関係者に不安が広がっている。これは食べても問題ないか(ドーピング陽性にならないか) ということをいちいち気にしなくてはいけないので、食事を楽しめないし、健全な気持ちでスポーツに向き合えなくなってしまう」

サプリメントの開発を行う製薬会社にも、認証制度は大きな影響を及ぼしています。認証を取得していない製品が排除されるようになれば、本当に良い製品が生まれにくくなるからです。実際に、JADAの認証を取得するには、莫大な申請費が必要で、認証を取得しているのはオリンピックのスポンサーを務めるような大手製薬会社ばかりだそうです。

「ドーピング問題に限ったことではないが、利権や政治で方向性をゆがめてはいけない。このままでは、技術で貢献しようと日々研鑽している中小企業は芽を摘まれてしまう。余計な制度や規制を増やさないためにも、当事者の立場で問題提起を続けていく」

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2023年6月現在、テクノサイエンス社の提訴を受けたJADAなどの機関は「係争中のため詳細なコメントは差し控える」としています。裁判や同社の動向を今後もお伝えしていきます。